疲労長時間の運動や労働、精神的な作業をすることによって体に起こる生理的な現象が疲労です。体が重い、だるいなどの全身症状、肩や腰のこり、眼がショボショボして見えにくい、頭痛といった肉体的な症状のほか、やる気が起きない、悲観的になる、集中力がないというように、精神面の症状も起きてきます。疲労を回復するためには、まず栄養をとり、ゆっくり体を休めることが大切。それでも回復できない場合は、がんや甲状腺、肝臓、心臓などの病気の症状として現れている可能性もあります。
漢方で疲労に対処しよう
漢方では、体内には生命活動をコントロールする「気・血・水(き・けつ・すい)」があり、疲労はこれらの不調和が原因であると考えられています。とくに「気」は血と水を統合する生命エネルギーととらえられているため、疲労を解消するには気のアンバランスを整えたり、気を強めたりすることが大切となってきます。加えて、体に栄養を運ぶ「血」を補う必要があります。こうした治療を行なうことで、胃腸も丈夫になって食欲がわき、栄養分の吸収も速やかに。元気な体を取り戻すことができます。
疲労を改善する目的の漢方薬として代表的なものは、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)で、だるい、気力が出ない、食欲がないといった状態に、とてもよく効きます。気力ばかりでなく、体力も回復させてくれる処方です。年齢的な衰え、夏ばてや病後の回復期にもよく用いられる方剤です。また、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)もよく使われます。これは脳のストレスをとるものです。 気虚に加えて、皮膚がかさついたり体重が減少したりという血虚の症状も伴うときは、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)が効果を発揮します。人参養栄湯(にんじんようえいとう)を使うこともあります。胃下垂に伴って疲労感、冷え、無気力が現れているときは、四君子湯(しくんしとう)や六君子湯(りっくんしとう)などの胃腸症状に効く漢方薬が使われます。
疲労に使われることの多い漢方薬 補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯、四君子湯、六君子湯など
漢方の診察では、独自の「四診」と呼ばれる方法がとられます。一見、疲労とはあまり関係ないように思われることを問診で尋ねたり、お腹や舌、脈を診たりすることがありますが、これも疲労の根本的な原因を探るために必要な診察です。また、体質改善を目的にする場合は長期にわたる服用が必要となりますので、忘れずに根気よく飲み続けることが、疲労改善の最大の鍵となります。もちろん漢方薬だけに頼らず、栄養がある食べものをとり、睡眠をたっぷりとり、規則正しい生活習慣を送ることも疲労回復に大切です。
1 慢性疲労症候群とはどのような病気でしょう 「この病気の人達の多くは、かぜをこじらせたような全身の倦怠感をもっています。この倦怠感が強いときは、数分間立っていることもつらくなります」そして日常生活もままならなくなり、寝込んでしまいます。微熱や喉の痛みがあって、かぜと診断されることが多いそうです。安静にした結果、かぜ症状がとれると、倦怠感だけが目立ち、今度は「自律神経失調症」と診断されがちです。症状が進むと、感情の不安定や不眠といった症状が現れ、神経科の治療を必要とする場合もでてきます。 見落としてはいけない三つの身体所見 西洋医学では、全身の倦怠感のほかに、身体所見が重要であるとされています。 「微熱がある、喉が赤い、首や腋の下を押さえると痛みを伴ったリンパ節があります。この所見があると、ほかに病気があるかどうか除外診断をします」 除外診断の結果、甲状腺疾患、肝臓ガン、子宮ガンが見つかったこともあります。慢性の倦怠感がさまざまな病気につきものであることを示しています。
2 確立された治療法がない慢性疲労症候群 健康そうに見えても、ひどいときには箸すら持つことのできない慢性疲労症候群ですが、今のところ、これという治療法はありません。いちばん大切なことは、肉体的、精神的な安静です。 西洋医学ではこれといった治療法がないので、痛みには鎮痛剤、鬱状態には抗うつ剤、不眠には睡眠薬という対症療法でしのいでいます。
3 律儀でまじめなタイプの人が多い この病気には、とてもまじめな人がかかりやすいと言われています。まじめに仕事や物事に取り組み、責任感がある人が患者さんに多いからです。 患者さんの多くは、この病気が周囲に理解されなかったため、がんばろうとしてかえって症状を悪化させています。
4 周囲の理解と肉体と精神の安静を 日常生活もままならなくなるので、職場や学校で、病気への理解が必要です。特に「第二のエイズ」などと不治の病や伝染病のように誤解されがちでしたが、医学的根拠はまったくありません。 安静にするためには、家族の理解が大切です。感情の不安定や気分の落ち込みは、家庭環境を容易に悪化させてしまいます。家族の理解だけで症状の改善がみられたり、抑うつ状態も投薬なしで自然に改善することも多くあります。 治りにくい病気ですが、決してあきらめることはありません。正しい知識と周囲の理解のもとで、初めて治療が効果を上げます |