不妊症
医学的には、「避妊をしないふつうの性生活を送っているにもかかわらず、2年以上妊娠しない状態」を不妊症といい、その割合は10組に約1組と言われています。原因は大きく女性側にある場合(卵管の異常や排卵の異常)と男性側にある場合に分かれますが、検査をしても原因が分からないケースもあります。現在の不妊症治療としては、タイミング法、排卵誘発剤の投与、人工授精などが挙げられます。
西洋医学的な治療を行っても妊娠に至らなかったり、不妊の原因が分からなかったりした場合、漢方治療を行うことがあります。また西洋医学的な治療を補うかたちで漢方薬を用いることも少なくありません。最近では漢方薬の不妊症に対する有効性が科学的に解明されつつあり、排卵障害には○○というように、西洋医学的な使い方をするケースも出てきているようです。
漢方のプロセス
不妊症の漢方治療では、女性の冷えやストレス、胃腸虚弱、肥満や極端なやせなどが不妊につながる可能性があることに注目し、こうした問題を漢方薬で解決することで、自然妊娠に至るように導いていきます。そのためにお腹や脈を診る四診といった漢方医学的な診察が行われることもあります。
男性の不妊 西洋医学的には難しいとされる男性の不妊治療に対しても漢方薬が用いられます。精子の運動率を上げたり数を増やしたりすることを期待して、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や八味地黄丸(はちみじおうがん)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などが利用されます。なかでも補中益気湯はいくつかの臨床研究から、精子の濃度や運動性を改善させる可能性があること、虚証の男性に用いるとより効果が高いことなどが分かっています。
不妊治療に対する基本的な考えは、まずは「体の調子を整えること」です。
その方法には ・血の通りを良くする(活血)・・・・体のお掃除 ・血の質を良くする(養血) ・体のエネルギーの通りをよくする(理気) ・体にエネルギーを補う(補気・補腎) などが考えられます。 これらは単独で行うこともあれば、また同時に行う場合もあります。これがいわゆる、「気・血・水」を整えることです。これら治療をどのような順番に行うか、どの組み合わせが良いのかなどを考え、適切に行うことが、漢方薬を使った不妊治療の基本となるのです。
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