風邪のはなし
「初期のカゼは自分で治せる」 漢方薬を飲んだのに風邪が治らなかった経験はありませんか?中医学では風邪を大きく二種類に分けます。そして、この種類を間違えると適確な効果がでないのです。
その二種類とは・・・
(1) うなじが「ゾクゾク」のカゼ。 中医学では「風寒(ふうかん)」のカゼといいます。風邪(ふうじゃ)と寒邪(かんじゃ)の連合で風寒(ふうかん)です。症状は とにかくゾクゾクします。他には 寒気がひどい、発熱していても本人は寒がる、うなじや背中がこわばるなどです。原因としては寒い思いをしたことです。西洋医学では寒さだけで風邪を引くことはないとされています。でも、外で立ち話をして冷えてしまったときや、髪が濡れたままコンビニに行ったりした後に寒気がでることがあります。皆さん心当たりがあるのではないでしょうか?
(2) のどが「チクチク」のカゼ 中医学では「風熱(ふうねつ)」のカゼといいます。風邪(ふうじゃ)と熱邪(ねつじゃ)の連合で風熱(ふうねつ)です。原因はウィルスに接触したことです。風邪を引いている人のそばにいったり、病院や人ごみに行ったなどでもらってしまいます。症状は、のどが痛い、ちくちくする、熱感がある、寒気はひどくないなどです。この初期症状を経た後に鼻水やせきなどが出てきます。実は、よく聞く“葛根湯(かっこんとう)”という薬は(1)のタイプにしか効かないのです。玉子酒やネギや生姜を使った民間療法も(1)のタイプの風邪ならばよく効いてくれますが(2)のタイプにはあまり効きません。なぜなら、葛根湯やネギやショウガは、体を温めながらカゼを追い出すからです。体が冷えてゾクゾクしている(1)のタイプには、効くのですが、寒気はひどくなく、むしろ熱感が強いようなカゼには効かないのです。そして困ったことに現代では(2)のノドからくるようなタイプの風邪がほとんどなのです。
「風邪の薬を発明したらノーベル賞」というのは本当です。風邪の原因の99%はウイルスで約200種の風邪ををひきおこすウイルスが特定されており、悪いことにこれらのウイルスはその外側のカプセルの様なものの形状を一定の周期でコロコロ変えるので、常に新しいウイルスが飛んでくるようなものです。これではいくら身体に備わった免疫機構が優秀でも、とても追いつかないのは当然です。
現在の医学では大多数のバイキンを殺す薬ができているのですが、ウイルスを殺す薬はまだほとんど無いのが実情です。ワクチンといっても次にどんなウイルスがやってくるかわからないのに、まるで「あてもの」みたいなもので、敵が飛行機でやってきているのに魚雷発射するようなものです。 では、風の原因の大部分を占めるウイルスに対して薬はまだできていない、ワクチンは期待薄、で、どうするのかということになりますよね。そこへ登場するのが漢方薬です。漢方薬そのものがウイルスを殺すのではありません。ウイルスをやっつける機能を高め、身体の戦闘能力を増強するのが漢方薬です。 葛根湯(かっこんとう) 誰でも知っている有名な漢方の風邪の薬です。落語でも「葛根湯医者」というのが出てきて、どんな病気でも必ず葛根湯を処方するというすごい医者です。 葛根湯が効く風邪は、汗が出ないで頭が痛く、肩こり感が強く、少し寒気がして熱が出かかっているような”ひきかけ”の風邪です。こじれた風邪には使いません。普段から身体や胃腸の弱い方は葛根湯は強すぎて気分が悪くなったりします。
普通の体力の人で、風邪のひきかけなら70%の割合でこの処方が合うと思います。鼻にすぐくる人は「葛根湯加川弓辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)」という便利なエキス剤もあります。大切な試験のある日の朝に葛根湯を飲んで行くと点数が上がります。又、夜勤や当直明けに葛根湯を飲むと頭がスッキリして快調です。
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